氣の呼吸法

「氣の呼吸法」藤平光一/幻冬舎文庫より

 

 

「氣の呼吸法は、自分自身の心の状態を知るうえで重要な役割を果たします。氣の呼吸法を日々行うと、呼吸が静まるとともに心が静まります。すると、心は波静まった水面の如く、すべてのものを明らかに映し出します。自分が陥っているマイナスなこと、自分がとらわれて見えなくなっていることなど、自分の心の状態を正しく知ることができるのです」

 

「氣の呼吸法を行うことで心が静まっていくうちに、さまざまなことへの心のとらわれが次第に姿を消して、自分の考えが正しいかどうか、自分が何をすべきかに氣がつくのです」

 

 「私たちは天地自然と調和することで生かされています。調和とは天地自然と氣の交流をすることです。その交流を保つための重要な働きが《呼吸》です。私たちは全身で天地自然の氣を呼吸しているのです。《氣の呼吸法》とは、この《天地自然との氣の交流》を盛んにし、生命力を盛んにする最高の健康法なのです」

   

「世間には、さまざまな呼吸法があふれています。中には何秒吸って、何秒止めて、何秒吐く、といったものや、息を吸うときに下腹をふくらませ、息を吐くときに下腹をへこませるというものもあります。しかし力強く吸ったり、故意に息を止めたり、腹に力を入れたりしていると、毛細血管が収縮し、うまく酸素が運ばれません。それは一時的に肺の空氣を入れ替えるだけの呼吸でしかないのです」

 

「そこで身体のすみずみまで酸素を行き渡らせることのできる全身呼吸が、《氣の呼吸法》です」

 

「この呼吸法は、神道に古くからある、みそぎの呼吸法《永世(ながよ)の伝》から来たものです。それを心身統一に基づき、心身ともに正しい法則に従って行う《全身呼吸法》にし《氣の呼吸法》と名づけました」

 

「氣の呼吸法の特徴は、心身統一して行う呼吸、つまり自然体で行う自然な呼吸であることです。呼吸を意識してコントロールし、秒数を決めたり息を止めたりする必要はありません。自然体で楽な呼吸をするだけでいいのです」

 

「ただ重要なのは、《何が自然なのか》《自然な呼吸とはどのような呼吸なのか》《どうやれば自然な呼吸ができるのか》を知ることです」

 

「天地自然は生成流転して瞬時として止まることはありません。森羅万象、動かないものは一つとしてないのです。氣を留めるのがいかに不自然なことか、天地自然の法則を見るとよくわかるでしょう」

 

「呼吸もまた然りです。息を吐くことによって、自然に息が入ってきます。呼吸において、意識して息を留めるのは自然ではありません。この法則を理解することで、氣の呼吸法を楽に行うことができるのです」